被災地でのクリスマス(フィリピン)

written by philipp.martin@om.org (Philipp Martin)

 貧困のサイクルを断ち切る方策として、フィリピン政府社会福祉開発省は、極度の貧困世帯を対象に育児補助金を支給している。これはゼロ歳児から14歳までの子供を持つ家庭に対し、子どもの健康管理や教育に関して一定の基準を満たすことを条件に4年間現金を給付するという制度(条件付き現金給付 Conditional Cash Transfer=CCT)。CCT制度を利用する世帯は現在百万世帯ほどもあるが、その実施にあたっては政府だけでは手が回らず、福音的な教会などのNGO団体に協力を求めて制度を維持している。

OMフィリピン・セブ島チームは、地域教会に対して、このCCT制度に積極的に協力するよう働きかけを続けてきた。

今回の台風被害に対するレイテ島タクロバンでの支援活動を続ける中、支援チームはこのCCT制度に協力している教会の牧師夫妻と出会うことができた。この教会を通してCCT制度を受けている200世帯に食糧配給やカウンセリングなどを提供している。

CCT制度がさらにタクロバンの諸教会に普及することも視野に入れ、OMフィリピン・セブ島チームは代替学習制度(Alternative Learning System=ALS)を提供している生徒たちと共に子どもクリスマス会を企画した。(注:ALS制度は経済的理由や親に捨てられたなどの理由で小学校や高等学校に行けなかった人を対象に、公民館や教会で民間団体が政府の要件を満たした授業を行ない、認定試験に合格することで学校卒と同等の資格を与える制度。OMフィリピンはこの制度に従った教育を路上生活を送る子どもたちに提供している。)

OMフィリピンはALTの生徒たちと一緒にタクロバンの300人の子どもたちのためのクリスマス会を企画。被災地の子供たちを励ましたいと熱心に願うALSの生徒たちは3000個のビスケットを焼き、一人一人に宛てた励ましの手紙も書き添えた。

12月15日の早朝、OMフィリピンのスタッフとボランティアたちと共に、ALSの生徒たちもタクロバンに出発。子どもクリスマス会は午後3時に予定されていたが、会場となる教会に着いたOMチームはビックリ!まだ午後1時だというのに、500人もの子どもたちがもう集まって待っていたのだ。

300人を予定していたクリスマス会に500人を超える子どもたちが集まっていたのに驚いたチームは、急きょ準備を整えて、列に並んだ子どもたちにスパゲッティ、パン、チキンとビスケットの食事を用意。台風による被災以来、缶詰などの非常食しか食べていなかった子どもたちにとっては大ごちそう。OMスタッフはALSの生徒たちと共に、歌やゲーム、お話しなどのプログラムを通して、ご降誕の主こそが何よりも素晴らしいプレゼントであることを証しした。

クリスマス会はタクロバンの子どもたちにとって祝福だっただけでなく、ALSの生徒たちにも意義深いものとなった。クリスマス会の後、彼らはこのようにコメントした。「被災で大きな心の傷を負った子どもたちが笑顔を見せてくれたのがとても嬉しかったです。」「自分はこれまでずっと助けを受ける側にいましたが、誰かを助けて励ますことができたのは私の人生でこれが最初でした!」
 
OMフィリピン・セブ島チームが現在準備しているのは、被災した家族に届ける1200の特別なクリスマス食品パッケージ。そしてレイテ島タクロバン、ボホール島、セブ島北部の3つの地域の13箇所の教会や会場でクリスマス会を来週にかけて開く予定。OMスタッフ、ボランティア、大学生、学校へ行けていない若者たちが運営を行なう。

このクリスマスの時期、被災した方々にクリスマスの喜びを届けるOMチームとボランティアたちのためにお祈りください。これまでOMによって援助を受けてきたストリートチルドレン(路上生活を送る子どもたち)が成長し、今回、被災者支援活動を通して被災した人たちを助ける側にまわっています。助ける側に立つことで、彼らに大きな自信が与えていることを感謝しています。